Power Queryで「相対パス」? これって、ありなの? それとも、なし?

そもそも「相対パス」って、なに?

相対パス(Relative Path)=相対+パス

チョット、ムズカシイ……。

まず、後半の「パス」。
これは、「Path」と書き、日本語だと「小道」。
IT用語では「ファイルやフォルダの場所」を意味します。

次に、前半の「相対」(Relative)。この反対語が「絶対」(Absolute)。
Excelでは、「セル参照」する際に、「相対参照」(Relative Path)、「絶対参照」(Absolute Path)という機能があるのを聞いたことがある読者も多いと思います。

・「相対参照」とは、コピー先のセル位置に応じ、参照先のセルが自動的に変わる。

・これに対し、「絶対参照」は、セルをコピーしても参照先のセル値が固定される。「$」マークがセル番地の前に付されるのが「絶対参照」。常にそのセルを参照し続ける、これが「絶対参照」。

言葉だけだとわかりづらいので、図を参照してください。

セルC3で、セルA3を参照し、これを下にコピーしたのが、「相対参照」。
セルF3で、セルA3を参照し、これを下にコピーしたのが、「絶対参照」。

各セルに入力された内容は、その右列にあるD列とG列をご覧ください。
G列を見ると、「絶対参照」ではセルの前に「$」がついているのが分かります。
この「$」がついていると、ここをずっと見続ける、この事例では「セルA3」をずっと見続ける、これが「絶対参照」です。

これに対し、D列を見ると、コピー後のセルの値は「=A3」「=A4」……という具合に、「1行ずつ」下にずれているのが分かります。
これが「相対参照」です。

つまり「相対」という概念は、「何かと比較して、その位置が決まる」ことを言います。

転じて、「相対パス」という概念は、「自分が現在作業している場所を基準に=相対的に、あるファイルやフォルダの場所=パスが決まる」ということになります。

「パワークエリで、相対パスが使えるよ」というWEBサイトなどを見かけ、モヤモヤ、もやもや……。

「なんちゃってモダンエクセル」派が展開する論理には、「1次情報」にはない、当方が思いもつかないような、突飛で、面白い、やんちゃな論旨が、頻繁に出て来ます。

その中の一つに、こんなのがありました。

パワークエリで「相対パス」を使うと便利だよ!

なんちゃってモダンエクセル派
なんちゃってモダンエクセル派

これ、初めて目にしたとき

「ん?」

「大丈夫なのかな?」

「ちょっと心配、だって、これ、1次情報にないんだもの!」

と思いました。

よくわからないまま、ず~っと、モヤモヤ、もやもや……。

抜け道に、もやもや…。

色々考えることはいいことだと思います。
しかしね~、と思うことも。

上記ツイートでリンクしているブログでは、「相対パス」に関するセキュリティー面での指摘を受け、抜け道を色々模索されていますが、果たしてどうなんだろうともやもやさせられます。
こうした動きに一石を投じたのが次のツイートです。

このツイートで引用する下記ブログでは、当方が指摘するように「相対パス」による「情報漏洩リスク」を詳細に解説してくれています。英語ですが、グーグル翻訳などを使えば、大体のことは分かると思います。

こちらの「一次情報」もご参照ください。

Power Query を使用するときのベスト プラクティス - Power QueryPower Query を使用するときのベスト プラクティス
Power Query を使用するときのベスト プラクティス - Power Query docs.microsoft.com
Power Query を使用するときのベスト プラクティス - Power Query

専門家の助言

当方のモヤモヤを一気に晴らしてくれるツイートが先日ありましたので、ご紹介します。
いつもお世話になっている、加賀田さんです。

この方は、Power PlatformのMVPというマイクロソフトから正式にプロフェッショナルと認められた方で、 周りから「Power BIの神」と崇め奉られている、ホンモノです。
ExcelやAccessにも大変詳しく 、「モダンExcel」にも精通されている方です。
当方は、加賀田さんから「モダンExcel」という存在を、2018年夏に教えていただきました。

その加賀田さんが、こうつぶやきました。

当方、膝をポン!

ですよね~


この一つのツイートで、モヤモヤがスッキリ!

プライバシーレベルを無視する相対パスは、リスク大!

2021/12/8、夜のPower Query勉強会でも、当該「相対パス問題」が取り上げられました。

加賀田さんやゆーごさん(いずれもMSが認めたMVPの方々です)の話を、以下要約。

「Excelでワークシート上にフォルダーパス(相対パス)を読み込むのはセキュリティ上、プライバシーレベルの設定上(ファイアーウォール)、よくない。
なぜなら、Power Queryに備わるプライバシーレベルをすべて無視しなければ、相対パスは使えないからだ。
最悪、組織のデータが漏えいすることもあり得る」

上記のように、「相対パス」に関して、とても深刻で重要なアドバイスをいただきました。

そもそもPower Queryは様々な「コネクター」を使い、元のデータをPower Queryに取り込む仕組みがあります。それぞれのコネクターには最適なセキュリティ対策が施されていて、これを無視する「相対パス」の利用はリスクを増大させるだけなのです。
そのリスクを負えるのであれば「相対パス」を利用すればよいのかもしれませんが、恐らくリスクを負ってまで利用するメリットはないでしょうから、「相対パス」の利用は行うべきではない、となります。

どうも「なんちゃってモダンエクセル」派は、Power Queryを「パワク」などと軽く捉えがちですが、拙著「モダンExcel入門」でも指摘しているように、そもそもPower Queryは強力なツールなので、基本をきちんと理解をしておかないと、言い換えるならば、MSの一次情報にない誤ったPower Queryの使い方をすると、上記指摘のように「情報漏洩」など大事に至ることもあるので、注意が必要なのです。

MSの「一次情報」を参考にして勉強してみてください。下記は必読です。

プライバシー レベルを設定する (Power Query) - Microsoft サポート機密性の高いデータが承認されたユーザーのみが表示されるように正しく構成するには、プライバシー レベルが重要です。 さらに、データ を結合しても望ましくないデータ転送に影響を与えないように、データ ソースを他のデータ ソースから分離する必要もあります。 プライバシー レベルを誤って設定すると、信頼できる環境の外部で機密データが漏洩する可能性があります。 プライバシーを理解し、ニーズに適したレベルに設定してください。
プライバシー レベルを設定する (Power Query) - Microsoft サポート support.microsoft.com
プライバシー レベルを設定する (Power Query) - Microsoft サポート




参考までにPower BIに関するリンクも張っておきます。

Power BI Desktop のプライバシー レベルを理解する - Power BIPower BI Desktop のプライバシー レベル
Power BI Desktop のプライバシー レベルを理解する - Power BI docs.microsoft.com
Power BI Desktop のプライバシー レベルを理解する - Power BI


「なんちゃってモダンエクセル」派の思考回路

「なんちゃってモダンエクセル」派の主張は、思考回路が「セル」から抜け切れていないように思います。
したがって、こうした従来Excelで使うテクニックを、モダンExcelの土俵に引っ張り出してくるのでしょう。

確かに面白い議論だとは思います。
しかし、MVPの加賀田さんもご指摘のように、当方も「相対パス」については同意しかねます。

本稿では、「間違ったパワークエリ」の使い方を推奨するつもりは、毛頭ありません。
よって、パワークエリによる、この「相対パス」の具体的な説明は行いません。ご了承ください。
どうしても気になる方は、「パワークエリ」「相対パス」でググってください。
検索結果は、基本的にどれも同じ内容で、いずれも「なんちゃってモダンエクセル」派の主張によるものです。

「モダンExcel」について色々な論旨を展開されるのは、実に面白いですし、楽しいですし、何より「モダンExcel」の議論が活発になるのは、業務改善にもつながるなど、メリットもあるので良いことだと思います。

しかし、「安全性」など基本にかかわる部分を無視して「モダンExcel」のメリットばかりを強調するのは、あまりにもリスクが高すぎます。


なぜなら、この相対パスの議論も然りですが、そもそもPower Queryは従来Excelとは違い強力なツールであるが故、使い方を間違えると大変なことになることも知られているからです。
そうした「危険性」についての議論は、別稿に委ねます。

「便利だから使う」「メリットがあるから活用する」、こうしたことだけではなく、「危険性」や「デメリット」についても、議論の際にはしっかり考慮しないといけないと思います。
これは、「モダンExcel」のような新しい技術であれば、殊更留意すべき論点だと思います。

光が強ければ、影も濃くなる。

日本では、「モダンExcel」に関して「比較対象物」がまだまだ少ない状況です。
したがって、影響力のある方が間違った「なんちゃってモダンエクセル」を発信すれば、それが「正」とされてしまうことに繋がります。
そうなれば、多くの読者が迷惑を被り、リスクにさらされることにもなります。

光が強ければ、影も濃くなる。

「モダンExcel」は、かなり便利です。
その分、用法用量を間違えると、大変なことにも繋がります。
こうしたことを踏まえて、「モダンExcel」のような新しい技術を広めていく必要があると思います。

「モダンエクセルのパイオニア」を自称され、「Power BIでも使える、パワークエリ」などと主張されるのであれば、上記のような視点を持ち合わせ、正しく先頭を走っていただく必要があります。
さもなければ、追随者が奈落に向かうことだってあるのです。
こうした自覚をもって、先導していただかなければならないと思います。

あああああ、奈落に……。



当方は「モダンExcelのパイオニア」など、恐れ多い主張をするつもりは、毛頭ありません。

現場で使うレベルの内容を、主に非IT担当者に向けて、基本に忠実にかみ砕いて解説し、「1次情報」を基に習得してきた「正しいモダンExcel」を入門者に伝える、これが当方の使命だと思っています。

その先にあるPower BIなどに付随する高度なレベルについては、MVPの方々などの専門家にお任せすればよいと思っています。

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「正しいモダンExcel」の使い方の基本を学ぶには、Power Query(パワークエリ)とPower Pivot for Excel(パワーピボット)の両者を「一体理解」する必要があります。
ぜひ、拙著「モダンExcel入門」(日経BP)で学んでみて欲しいと思います。
サンプルデータで、実際に手を動かしながら、理解を深めることもできます。参考にしてください。

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「モダンExcel研究所」を楽しむ際の【注意事項】

コンテンツコピー、スクレイピングなど【厳禁】 ☚【検知ツール設置済】☚悪質な場合【法的措置】を講じます

(過負荷によるサーバー障害が生じた経験上、ご協力お願いいたします!)

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